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初恋、恋愛不信、元妻への片思い…恋愛に悩む家族それぞれの結末とは?のメイン画像
andGIRL7月号より
放送作家・コラムニストの町山広美さんが女子力アップにつながる映画を紹介する『andGIRL』の人気連載「町山広美の『女子力アップ映画館』」。
今回は、映画『ハッピーエンドが書けるまで』の魅力を町山さんに教えてもらいました。
*  *
原題は『Stuck in love』。愛に行き詰まってる、思うように身動きが取れない、そんな意味。父、娘、息子。家族それぞれがそんな状態にあるというのが、この映画。父は、子どもたちの母親、つまり元妻に片思い。大学生の姉は、恋愛不信。高校生の弟は、初恋まっただなか。連続ドラマに展開しそうな、欲張りな設定です。
そして『ハッピーエンドが書けるまで』という邦題がついているのは、その悩める家族3人がみな、作家だから。父ビルはかつて賞もヒットもつかんだ人気作家、でも最近はちっとも書けなくて、ぼんやりと海を眺める日々。姉サマンサは20歳になる前に、期待の新人作家として華々しいデビューを飾ろうとしています。それを少々嫉妬気味に見ているのが、弟ラスティ。スティーヴン・キングに憧れる彼も、自作執筆中の未来のファンタジー作家。
子どもたちがそろって作家を目指したのは、父ビルが彼らに欠かさず日記を書くことを強制してきたから。確かに目的は達成しつつあるわけだけど、おかげで2人ともちょっと厄介な性格に育ってしまいました。姉サマンサは、とてもシニカル。弟ラスティは、内向的。
さらに、母エリカが若い男と恋をして家を出て行ったことも、2人の性格や恋愛観に濃い影を落としています。しかも父ビルはそんな元妻の家をのぞきに行ったり、感謝祭のお祝いの食事には彼女の席を用意したりと、未練のたれ流し状態。おかげで姉サマンサは「恋愛しないでやることだけやりたい」と、堂々のヤリマン宣言。
ところが、そんな宣言にもひるまず、心を寄り添わせてくる、同じ作家志望の同級生が現れます。弟ラスティは、奇妙なお話を愛する傾向そのままに、奇妙な女の子に恋を。障害多数の彼の初恋は、どうなってしまうのか。
両親の離婚など実の体験をもとに、そのハッピーエンドがあるとしたらという思いで書かれた脚本は、監督のジョシュ・ブーン自身によるもの。この映画でデビューし、続いて撮った『きっと、星のせいじゃない。』が日本では先に公開されましたが、笑いを含んだ明るいタッチの中に気負いなく差し出す切なさが、持ち味のよう。登場人物の思いをエリオット・スミスなどの楽曲にたくす演出も効いていて、今後、青春ものの連ドラあたりでヒットをとばしそうなタイプの作り手です
※『andGIRL』2015年7月号

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