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桐野夏生「プロ彼女は既婚を職業にしている」女にとって本当に大切なことって? のメイン画像
andGIRL10月号より
コラムニストの芳麗さんが、大人の女性を美しくする“音楽と本”について毎回ゲストと語り合う『andGIRL』の人気連載「芳麗の[本と音楽の話]Café」。
今月のゲストは、『グロテスク』『ハピネス』など女性の心の痛みや奥底にある闇を暴きながらも、ドラマティックで深遠なエンターテインメント作品を生み出してきた作家・桐野夏生さん。最新刊『抱く女』でも、主人公・直子の葛藤や痛みがリアルに体感できる青春小説になっています。
これらの作品同様、潔く美しくエネルギッシュな桐野さんに、“女にとって大切なこと” を聞きました。
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andGIRL10月号より
芳麗:本作のテーマでもある“女性の生き辛さ”は、桐野さん自身も感じていらしたことですか?
桐野:はい。70年代初頭は、アメリカ発生のウーマン・リブという運動がありました。女性が性や生殖によって縛られる社会はおかしいと、セックスにおいても主体的になろうというムードが生まれました。
芳麗:はい。
桐野:当時、学生運動においても、男女は対等ではなかったのです。でも、ウーマン・リブ思想が入ってきて少しずつ変わり始めた。今では、フェミニズムと呼ばれて、揶揄されたりもしますが、救われた女の人たちもたくさんいたと思います。当時のリブのスローガンのひとつに、「抱かれる女から抱く女へ」というのがありました。男女関係においても、自分たちは主体性を持つんだということですね。
芳麗:素敵な言葉ですよね。でも、なかなか“抱く女”になるのは難しい。直子もいろんな男友達と自分の意志で寝ていたつもりが、陰では“公衆便所”と呼ばれ傷ついていた。あの差別的な呼称は、いまだに聞きますし。今を生きるアラサー読者も、直子の葛藤や痛みはわかるはず。
桐野:いつの時代も女性が主体的に生きるのは難しいです。でも最近、特に後退している気がします。“プロ彼女”みたいに、“既婚”を職業にしようっていう、したたかな人もいるでしょうね。しかし、経済的にも自立して対等になるのがいちばん良いと思います。ただ、産業構造が変わってしまっているから苦しい。今、働く女性の6割は非正規雇用でしょう。大学を出ても門戸が狭いし、雇用に不安があると自由に生きられない。
芳麗:だから、生存のための結婚を焦ってる女性も多くて。すると、結婚をエサに女性とセックスしようとする男も増える。婚活パーティーでは、1度したら連絡がつかなくなったっていう話は、山ほど聞きます。
桐野:悪辣ですね。“子どもを産めば勝ち組”っていう風潮も良くないですよ。15年前の負け犬ブームなんて、まだ牧歌的でした。今は少子化問題も深刻だから、産めよ増やせよで、日本古来の伝統的な家族に回帰せよ、と叫ぶ人もいる。あたかも産んでない女が一人前ではないような風潮を作る。
芳麗:社会について知ることや、直子のようにフェミニズム思想を持とうとすることは、わが身を守り、心の支えになるのかなと思いました。
桐野:そう思います。
※『andGIRL』2015年10月号

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