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児童文学を実写映画化『パディントン』、大人こそ見たい“重い”テーマとは? のメイン画像
andGIRL12月号より
放送作家・コラムニストの町山広美さんが女子力アップにつながる映画を紹介する『and GIRL』の人気連載「町山広美の『女子力アップ映画館』」。今回は、児童小説『くまのパディントン』を実写映画化した『パディントン』です。
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遠くペルーから憧れの大都会ロンドンにやってきた、クマのパディントン。この映画は彼を、あらゆる「よそ者」の一例として見て、そこから楽しくも心を打つ、今日的な物語を紡ぎ出しています。ちっとも児童向けなんかじゃありません。
世の中には、いろいろな「よそ者」がいます。故郷から戦火や迫害を逃れてやってきた難民や移民。性的マイノリティ。帰属するコミュニティをもたない人。さらには、会社や学校にうまくなじめない人も、自分を「よそ者」と感じて、心を痛めている。文化や価値観が異なる人たちや疎外感を感じている人と、多数派の側の人たちはどう接して、どう共存していくのか。それは現在の社会が抱えている、大切で難しい課題。
この映画では、赤い帽子と青いダッフルコートのキュートな若きクマの紳士と、彼をめぐる物語が柔らかな答えを差し出します。
パディントンの声を演じるのは、はかなげな魅力で人気のベン・ウィショー。実は当初、ザ・英国紳士なコリン・ファースが演じていたそう。けれど製作途中でゲイを公言しても
いるベンに交替。結果、おなじみのクマ男子に若さだけでなく、新たな角度の魅力が加わりました。
そんなパディントンは故郷のジャングルで英国の文化を愛するおじさん夫婦に育てられましたが、大きな地震が起きてしまい、ロンドンにやってきます。そして首から下げた荷札の「この子の面倒を見てください」というメッセージを見たブラウンさん一家に連れ帰られる。慣れない街で失敗し誤解され冒険しながら、彼が家族の一員になっていく物語。
荷札のエピソードは、原作者マイケル・ボンドの体験に基づいています。幼い頃、ロンドンの大空襲で焼け出された子どもたちがそんな荷札を下げて立つ様子を見たのだとか。またボンドの両親は、ドイツから逃れてきたユダヤ系の子どもを預かってもいたそうです。
パディントンは、ブラウン家に仮住まいしながら、新しい生活になじもうとしますが、なぜか謎の美女に命を狙われます。その悪役を演じるのは、ニコール・キッドマン。最近は童話などの実写化で、大女優が悪役をオーバーアクト気味に演じることが流行していますが、ここでのニコールも実に楽しそう。非日常的でゴージャスな着こなしも見どころ。
衣装については、心が通じる場面で互いの服の色を似せるなどの演出もあり、カラフルでちょっと昔風で、本当に楽しい。美術も同様。絵本を思わせる鮮やかさと陽気さがどの場面にもあふれています。
※『andGIRL』2015年12月号

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