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【芳麗・女と文化の話】人生相談の名手・鴻上尚史が語る アラサー女子の婚活必勝戦略 のメイン画像

今月のゲスト:鴻上尚史さん

今、巷で話題の鴻上尚史さんの書籍「ほがらかお悩み相談」を知っていますか? 見た目は悪くないのにモテない男子の悩みから、毒親に振り回されて人生を謳歌できない30代女性まで――。あらゆる人のお悩みに、ディープな思想と実践的な戦術を授けてくれる相談室です。劇作家・鴻上さんならではの視点と包容力には、毎回、ハッとさせられつつ、考え方・選び方次第で、人生はもっと面白くなっていくことを教えてもらえます。

SNS時代。私だけ不幸と思うか。 「みんな大変だ」と気づくか。

芳麗 私も鴻上さんがAERAで連載されている人生相談にはまっています。回答を読んでいるだけで、視野が広がるし、自分の心の器まで大きくなる気がして(笑)。

鴻上 ありがとうございます。お悩みって、最終的に、決めるのは本人ですから。僕の経験と思考に基づいて、ひとつの考え方を示すことしかできないですけど・・・。

芳麗 こんなにも多種多様なお悩みに、リアルな回答ができるのはどうしてでしょう?

鴻上 40年間、劇団の主宰者として、あらゆる世代の劇団員のお悩みを聞いてきましたから。それが、この連載に生かされているのかなと(笑)。

芳麗 長年、人々のお悩みに触れてきて、時代の変化って感じます? 

鴻上 うーん。スマホ時代だから、隣の芝生が青く見える的な悩みは深まりましたよね。SNSで誰かの幸せな姿を見て、自分だけが不幸だと思いがち。でもね、SNSなんて一瞬の輝きを切り取っただけ。キラキラしたパーティーも、実際は悲惨なものだったかもしれないのに(笑)。

芳麗 SNSは決してリアルじゃないですよね(笑)。

鴻上 一方、今はネットをググれば、アラサーでもアラフォーでも多くの人が結婚や仕事に悩んでいて、「自分だけじゃない」と知れる時代でもある。つまり、ネット時代のどちらの面を見るかは、自分次第だと思います。

芳麗 後者の視点を持てた方が気楽ですよね。

Check!結婚できないのは「私」ではなく、 「日本」のせいかもしれない

芳麗 鴻上さんの回答を読んでいて、あらゆる悩みを解く共通の鍵があるなと感じました。1つは「同調圧力」を知ることかなと。

鴻上 大切だと思います。

芳麗 私自身もこれまで仕事や恋愛に悩みまくってきましたけど、いつも「これは自分のせいなのか、それとも社会のせいなのか?」と思いあぐねてきました。やっぱり、基本は自分の思いに忠実に生きることが良いとわかっていても、世間の空気や周囲の圧を感じて尻込みしてしまうことも多々ありましたから。

鴻上 そう。みんなが悩んでいるのは、「日本」や「社会」のせいかもしれない。本にも「同調圧力は日本の宿痾(しゅくあ)」だと繰り返し書きましたけど、日本は世界の中でも相当、同調圧力が強い国です。「みんな一緒でなくては」「同じ時間を過ごさなきゃならない」とかね。サラリーマンならなおさら。せっかく有給とって海外に行ったのに「いや、大変でしたよ」って上司に報告しなきゃいけないとかね。本当は楽しくても言えない空気がある。上司や会社が嫌だと言っても、大元を辿れば、敵は日本の同調圧力じゃないかな。

芳麗 ずいぶんと大きな敵ですね。

鴻上 うん。でも、敵の正体を知るだけでも楽になれるし、戦い方もわかる。正面からぶつかると爆破されるのは目に見えているから。いかに戦略的にうまく戦うか。たとえば、「『空気』を読んでも従わない」ことも時に必要な戦いですよ。

Check!結婚したい女性に必要なのは 女力よりも戦略と交渉力

芳麗 「結婚したいのにできない」というアラサー女子の悩みも、実は個人より社会の問題かもしれませんよね。自分の本心を省みる前に、親の圧力や世間体を気にして、無駄に焦ってしまっている人も多いから。

鴻上 親の言葉なんかで結婚を焦ると、本質からますます遠ざかりますよね。だって、仕事や趣味を頑張ったり楽しんだりしている人と出会いたいのか、ひたすら結婚したくて必死な人に出会いたいのか。

芳麗 出会いは自分の合わせ鏡。

鴻上 婚活パーティーの出会いだって、良い関係が育つかどうかは、結局、楽しく会話ができるかどうかしかないと思う。趣味でも仕事でも、生きていて楽しい瞬間がある人は、誰かと楽しい会話ができると思うし。そこから、恋愛も始まり、結婚につながる。お互いのスペックの話をしても、人間関係はいっこうに深まらないですよ。

芳麗 恋愛も結婚も始まりはシンプルな人間関係から・・・ですね。

鴻上 僕は婚活って特別なことじゃないと思う。恋愛も結婚も他の人間関係と同じ土俵です。ただ、戦略は必要ですよ。

芳麗 戦略ですか。

鴻上 誰かを好きになった時、相手に想いを伝えるだけでは足りないです。いかに自分を魅力的に見せるかだと思う。相手は、キャリアな女性が好きなのか、趣味に生きるおっとりした人が好きなのか。リサーチした上で、そこに近づこうとしてみるとか。

芳麗 なるほど。

鴻上 表面的なフリを続けるのではなく、心から楽しめることを見つけて没頭してみたらいいと思う。相手が絵を描くのが趣味なら、自分もホントに始めてみたら? 本気で楽しくなるかもよ。「結婚したい」という目的だけを露骨に出しても引かれるだけ。必要なのは、大人の戦略ですよ。

芳麗 大人の・・・ですね。

鴻上 親に対しても戦略的にね。「早く結婚しろ」などと鬱陶しい親には「その小言が婚活を失敗させているんだ」と伝えるべきです。良いなと思った男性と仲良くなりたいと思っても、親の小言が脳内に鳴り響くから、無駄にがっついてしまうと。怒るだけじゃなく、理由を説明して親に納得してもらう。つまり、交渉力を身につけること。それって、結婚できる能力ともイコールですよ。

芳麗 たしかに、無理に結婚に持ち込むのではなく、相手を納得させて、喜んで一緒になってもらわないと(笑)。交渉力って、結婚後に結婚生活を育む力にもなりましかね。

鴻上 そうそう。子育てだって、交渉力だと思うし。

芳麗 交渉力は言い換えれば、しっかりと話し合える力も含まれると思うんですけど・・・なかなか磨くには難しい力ですよね。

鴻上 コミュニケーションは技術ですからね。苦手意識がある人も何度も実践して経験を積むことで身につくと思います。他人同士、ましてや男と女はそうそう分かり合えけれど、伝わらないのが当たり前。伝わったらラッキーって思うくらいで、会話を重ねることじゃないかな。

Check!仕事、料理、美容でもいい。 人生を楽しむために自尊心を高める

鴻上 日本人の悩みの根幹にあると感じるものが「同調圧力」の他にもう1つ。「自尊意識の低さ」ですよね。

芳麗 おっしゃる通りです。私も含め「自分なんて」と思うネガティブな気持ちが悩みを助長させている人は多い。ここ数年、自己肯定感という言葉も流行っていますけど、自尊心との違いはありますか?

鴻上 自己肯定感を積み重ねると自尊意識が高まると思います。「上手に料理が作れた」みたいな小さなことでも良いんです。自己肯定感を積み重ねることで自尊意識が高まると、生きることにも肯定的になれますよね。

芳麗 ただ、日本において女性が自尊意識を持ち続けるって、なかなか困難だなとも思います。今年、本誌でも紹介しましたが、『美容は自尊心の筋トレ』という本があって。美容を通じて、いかに健やかに自分を愛し大切にするかということを、フェミニズム意識を持った著者が綴った良書です。でも、一方では、本書について「美容で自尊心は高まるの?」と否定的な意見を語る別なフェミニストの方もいらして。その方も書籍も合わせて読むと、そちらの意見や気持ちも分かるなとも。女性にとって美容をどう捉えるかは十人十色。自分の価値を外見や若さとどう切り離すかは、人それぞれ、困難で複雑な問題ですから。

鴻上 戦い方の違いですよね。おそらく、後者は原理原則こそが世界を変えるという信念を持って原理主義的な戦い方をしている。一方、前者の美容ライターの方は、相手の土俵にも立って戦っていこう派なのかなと。どの世界にもある、2種類の戦い方じゃないかな。

芳麗 社会に違和感を感じて、女性として生きづらさを抱えているのは、前者も後者も同じですけど・・・。

鴻上 敵が強すぎると、戦う側も分裂しがちだよね。フェミニズムは大きすぎる敵を相手に戦っていますから。ただ、1つ言えるのは、世界は個人の自由を尊重する方向に向かっているということ。LGBTQもそうだし、#MeTooも#KuTooもね。

芳麗 何も変わらないように見えて、世界は進歩しているのなら、希望が持てます。

Check!30代は女も男も、看板を磨くより 自分にしかない中身を揃える時期

芳麗 では、婚活や仕事で疲れきったアラサー女子たちが、自尊意識を高めるにはどうしたら良いしょう?それこそ、多くの人が「外見と若さ」の価値について、最も悩みがちな時期です。

鴻上 まぁ、外見はその人の看板ですから。アラサー女性のみならず、男だってないがしろにはできないものです。でも、看板はあくまで看板。客寄せには必要だけど、入ってみて何もない店ならみんなすぐ帰っちゃいますよ(笑)。中身のある男ならなおのこと、中身も見抜きますから。

芳麗 当然、そうですよね。

鴻上 だから、30代は中身を詰める時期ですよね。20代前半までは看板を磨くのに必死でも良いけど、その磨き方もわかってきた頃だろうし。自分というお店の中に何を揃えたいかを考えながら、楽しみながら、中身をどんどん詰めていく。方法は人それぞれでいいけど、ファッション誌だけでなく、いろんな本を読むとか、映画や舞台などカルチャーに触れるのも良いと思いますよ。そこで築いた自分なりの世界が、大切な誰かを引き合わせてくれるはず。

芳麗 先ほどの交渉力とかコミュニケーション力の話にもつながりますけど、いろいろな物事に対して自分なりの意見を持てるといいですよね。

鴻上 もちろん、そうです。ただ、普段、物事をじっくり考えていない人は、すぐに自分の意見なんて持てないよね。

芳麗 たしかに。

鴻上 まずは、いろんな本や文化やニュースに触れて、自分が何を感じるかを自問してみたらいいと思う。たとえば、社会の問題についても両極端な著作をどちらも読んでみて、自分は何を感じるのか内省してみるとか。時間をかけないと、自分の思考って深まらないと思う。ただ、全てのジャンルにおいて思考を深めようとすると疲れちゃうから(笑)。自分にとって大切なテーマについては、じっくり考えを積み重ねてみたらいいと思う。

芳麗 きちんと考えられる力が身についたら、悩みを克服する力にもなるんだろうなと。本書を読んでも、鴻上さんとお話ししても感じました。

鴻上 人生の折々で悩むものですが、完璧な選択はないですから。どの道を選んでも、100%正しいなんてないし、どんなに良いチョイスをしても後悔はゼロじゃないですから。後悔を恐れすぎず、その時々、自分がいいと思うことを選べばいいと思います。

芳麗 はい! これからも悩みながら、後悔を抱えながらも果敢に生きていきたいです(笑)。

本日の芳麗のオススメカルチャー

『鴻上尚史のほがらか人生相談』鴻上尚史(著)

10kg太ったらモテなくなった」「うつ病の妹の今後をどうする?」など。多種多様な悩みに鴻上さんの経験と思想を生かした名解答を連発。鴻上さんの意見はユーモアも交えつつ、本質をついていて実践的。相談相手はもちろん、読み手の視点をクリアにしつつ、前に歩き出せるよう励ましてくれるよう。混沌とした世の中を生きるための良質な処方箋 。

「『空気』を読んでも従わない」鴻上尚史(著)

対談中にも出てくる、日本社会の宿痾である「同調圧力」の仕組みと対処法について、「世間」と「社会」の違いと付き合い方についても詳しく解説した一冊。心を軽くしてくれます。

芳麗(よしれい)
NHK山形局のキャスターを経て、文筆業に。女性の生き方にまつわるコラムとインタビューを主軸に、本誌のほか、雑誌、WEBなど多くの媒体などで連載・執筆。著作に「3000人にインタビューして気づいた! 相手も、自分も気持ちよく話せる秘訣」(すばる舎)、「LOVEリノベーション」(主婦の友社)など。好きなものは、旅とご飯とカルチャー全般。

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