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悲しみを人生にどう生かせばいい?その答えは頭の中の“感情たち”のメイン画像
andGIRL8月号より
放送作家・コラムニストの町山広美さんが女子力アップにつながる映画を紹介する『andGIRL』の人気連載「町山広美の『女子力アップ映画館』」。
今回は、映画『インサイド・ヘッド』の魅力を町山さんに教えてもらいました。
*  *  *
お話の主な舞台は、ライリーという女の子の頭の中、その司令室。ライリーが誕生して、そこには最初、ひとりしかメンバーはいません。ヨロコビだけ。ライリーの成長に伴い、やがてメンバーは5人に。イカリ、ムカムカ、ビビリ、そしてカナシミ。ムカムカは嫌悪の感情です。
そんな5人は、ライリーが直面するさまざまな体験、刺激に応じてそれぞれが反応。ヨロコビがリーダーシップを発揮して皆の調和をとり、感情豊かで活発なライリーという魅力的な11歳の女の子を形成していたのですが、ある日、事件が。
田舎町から都会へ引越し。転校先で自己紹介をする大事なタイミングで、頭の中に保存されている「思い出ボール」のひとつにカナシミが触れてしまったのです。彼女が触れると、思い出がカナシミ色になる。ライリーは自己紹介で、田舎町で親友と遊んだ楽しい体験を話し出し、寂しくて泣き出してしまいます。
結果、彼女はクラスで孤立。この事件がパニックを呼び、なんとヨロコビとカナシミが、司令室の外へ放り出されることに。頭の中という巨大な世界で、ヨロコビとカナシミは司令室に帰って来られるのか、というイメージ豊かなスペクタクル。メンバーが欠けた感情キャラだけで形成されるライリーはどうなってしまうのか、という現実世界のドラマ。それを同時進行で見せながら、人は自分の感情にどう向き合えばいいのか、そして子どもから大人の世界へ近づくとはどういうことなのかを丁寧に、しかしとても大胆に描いていきます。
心理学や脳科学のアニメ化、いやいやむしろこれは、哲学に近いかも。誰もが人生に追い求める幸福、それを感じるというのはどういうことなのか。つらいこと、悲しい体験がその後の自分にいかされるためにはどうしたらいいのか……。考えるヒントがたくさん。
ヨロコビがちょっとうざいおせっかいに見えたり、カナシミがだんだん愛らしく見えてくるのも、脚本の企み。そして、彼ら感情キャラたちが、親のような庇護の目線でライリーを見守っている設定も、いろんなことを考えさせてくれる。
※『andGIRL』2015年8月号

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