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【芳麗・女と文化の話】ハライチ・岩井勇気が語る〝地味な日常〟の味わい方とは? のメイン画像

今月のゲスト:ハライチ 岩井勇気さん

人気芸人として活躍しながらも、独身アラサー男子として等身大の生活を楽しんでいる、ハライチの岩井勇気さん。ヒット中の初めての著作のこと、お笑いや芸能界で生きることついての考え方から、私的なお話・・・平凡な毎日の味わい方から結婚観まで、諸々、聞きました。

嘘が混じった派手な話より 地味な日常の面白みを描く

芳麗 初の著書の大ヒットおめでとうございます。口コミで広がっていますよね。私も「面白いよ!」と小耳に挟んで、書店で立ち読みしたら止まらなくなってレジに向かいました(笑)。

岩井 宣伝もあまりしなかったのに多くの人に読んでもらえているみたいでありがたいです。しかも、本の読者って熱心に感想を伝えてくれますよね。テレビで流されているものを観ただけではなく、「本を買った」という自発的な行動があるからなのかな。「あなたの株買いました」みたいなノリだなと(笑)。

芳麗 岩井さんのエッセイは徹底的にありふれた日常について書いていて興味深いです。「あんかけラーメンの汁」とか「組み立て式の棚」みたいな身近なものを予想外の視点で、面白く書いていて、静かな狂気も垣間見える。芸人仲間とかテレビ界のこととか、ほぼ書いていないのはどうしてですか?

岩井 いわゆる〝芸人のエッセイ〟にはしたくなかったんです。オレごときがお笑い論とか語るのもダサいし。「書けそうな雰囲気」だけはあるせいか、新潮社から依頼はいただいたものの、そもそも、自分のエッセイなんて誰が読むんだろうとも思っていたし(笑)。実際、文章なんて全然書いたことなかったし、読書もほとんどしてこなくて。

芳麗 信じられない!手練れているなと感じました。

岩井 普段、ネタ書いているからかな。エッセイも、オチに向かって書いていけば何とかなるもんかなと。地味な物事も自分の視点で見つめながら、「これが面白かった」「これ言いたい」をめがけていけば、別にストーリーなんてなくても、それなりにまとまるんですよ。あと、最後の一文で哀愁漂わせて、ちょっと良いこと書けたらそれっぽくなる(笑)。

芳麗 たしかに(笑)。自分のやり方を早々に見つけたんですね。

岩井 自分のシステムを見つけると、モノが作りやすいし、読み手にも伝わりやすいですよね。

Check!自分の人生がつまらないから、 不倫する有名人を叩くんでしょ?

芳麗 等身大で地味な日常について書こうと思ったきっかけは?

岩井 いかにも芸能人的な派手なエッセイって、ウワベ感があってすごく嫌だったんですよね。華やかな交友関係やエピソードを盛り込めば、多少は面白くはなるだろうけど、だんだん、読者も物足りなくなるでしょう? 化学調味料がこってり入った料理に慣れると、素材の味や薄味が食べられなくなるみたいにね。すると、書き手ももっと調味料を入れなきゃと、嘘をついて盛り始める(笑)。

芳麗 それって、テレビの番組で芸能人が話すエピソードトークも一緒ですかね。

岩井 ええ。基本、そういうのは嫌なんですよ。テレビでは短時間でわかりやすいネタを求められるのが恒例だけど、文章なら、些細なことの面白みも味わってもらえるかなと。地味な日常なら誰にでもあるものですし、「日常だけでも面白くできるんですよ」っていうことも示したかった。それこそ、僕は芸人ですし、面白い出来事がないと書けないなんて芸がない。

芳麗 なるほど。立場を問わず、変化のない日常や人生を、つまらないものに感じてしまう人も多いですよね。こんな風に些細で地味な日々を、自分なりに面白がれたらいいなぁと思いました。

岩井 だって、人生に刺激を求めたらキリがないですしね。自分の人生がつまらないと感じちゃうから、みんな不倫とかしたり、不倫する有名人をSNSで叩いたりするんでしょう。僕からしたら、何に対して文句を言ってるのかもよくわからないけど(笑)。

芳麗 そういえば、岩井さん、不倫した芸能人を叩きまくっているTwitter民に苦言を呈していましたよね(笑)。

岩井 「不倫を叩くな」って言いたいわけじゃないんです。他人の不倫とか離婚って、実際、「面白いこと」ですからね。倫理上、面白くないフリしているだけ。不倫を叩く人は正義を振りかざしているけど、実際は、人の失敗を面白がって叩いているところも大いにあるでしょう?叩くにしても自分の中にそういういやらしさがあることを自覚ないと、知らぬ間に他人を傷つけていることもありますよね。

芳麗 そうですよね。私も叩きはしないけど、ニュースを見るとつい興味を持って調べてしまう自分はいて。それはいやらしくもどこか面白がっているんだろうなと思います。

岩井 そうですよね。

芳麗 岩井さんは、極めて冷静で客観的です。その客観力こそが、地味な日常を面白がれる力にも繋がるのかなと思いますけど。

岩井 芸人って天然もいるけど、客観的な人が多いですから。人前に出る仕事だから「こう言えば、どう見られる」がよくわかる。たとえば、バラエティ番組の「いじり」は「いじめ」に近いですよね。先ほどの不倫の話にも通じるけど、バラエティ番組でもいじりという名のいじめを世間は楽しんでいる。いじめられている当事者は辛いけど、本人が客観視していれば、これは面白いことなんだと芸人は思えるから。

芳麗 自分事すらも他人事として面白がってしまえたら強い。

岩井 まぁ、そういう客観力を半ば強制的にでも身につけないと、芸人はやっていけないですから(笑)。

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