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映像よりも“音”に注目!?10月公開映画『バクマン』の魅力に迫る! のメイン画像
andGIRL10月号より
放送作家・コラムニストの町山広美さんが女子力アップにつながる映画を紹介する『andGIRL』の人気連載「町山広美の『女子力アップ映画館』」。今回は、映画『バクマン』の魅力を教えてもらいました。
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カリカリ。コッコッ。スー。主人公が握るGペンとケント紙の摩擦音が強調され、様々な思いが込められて響く。『バクマン。』は音がいい、音が気持ちいい映画だ。
2人の高校生が、漫画誌の最高峰『週刊少年ジャンプ』での連載を目指すお話。原作は、部数600万超えを果たしたこともある、その『ジャンプ』で連載されていた、人気漫画だ。漫画を描く。その動きの少ない行為をどうエンターテインメントにするか。それは、自らの脚本で映画化を担った大根仁監督にとって大きな課題。発注上手な大根監督は、最新の映像技術を操るプロたちとの共同作業で課題に向き合った。だからこの映画は、まず映像の目新しさで注目されるだろうし、実際楽しめるのだが、そこで音の果たしている役割が、実に大きい。
まず、主人公コンビの声だ。ストーリーとセリフをつくる担当と作画、完全分業制の2人組漫画家。作画担当の真城最高を演じる佐藤健は、いつもよりぼそぼそ話し、原作担当の高木秋人役の神木隆之介は甲高い声ではしゃぐ。このキャスティングの発表に、逆でしょとネット上でちょっとした騒ぎになった。
けれど映画を観ると、自分の屈託に気づいていてあえて多動症気味に振る舞う秋人と、ただならぬ情熱を奥にしまっている最高には、この配役が素直に合う。物語は、最高=佐藤健の情熱に徐々に火がつくことで高まっていく漫画が大好きで画力にも自信があるのに、彼が漫画家を目指さずにいたのは、大好きだったおじさんが漫画家だったから。作品としての素晴らしさより、多くの読者に楽しまれる漫画を描くことに使命感を持ち、おじさんは力尽きてしまった。
原作は未読だが、このあたりには「作品性なんかより視聴率」が当たり前のテレビ界に長くいる大根監督の仕事観が反映されているような。避けたかったはずの漫画道に最高が前のめりになっていくきっかけは、秋人からの誘い以上に、小学校から密かにずっと見つめてきた同級生女子との約束ができたから。声優を目指す彼女との約束は、「俺たちがヒット作を描いてアニメ化されたら、ヒロイン役やってよ。その夢が叶ったら、結婚してください!」
いきなり結婚の約束って、漫画か。このヒロインを演じる小松菜奈のソフト・フォーカスのアップがやたらと長くて、いつも風に揺られているのも、漫画みたい。笑っちゃう。そう、漫画みたいな展開を、漫画みたいな話法と演出で見せていく。なにしろ『ジャンプ』のキーワードである「友情」「努力」「勝利」が、この映画の骨組みでもあるのだ。
andGIRL10月号より
※『andGIRL』2015年10月号

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