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“できる女あるある”に注目!CEO役アン・ハサウェイ主演映画『マイ・インターン』のメイン画像
andGIRL11月号より
放送作家・コラムニストの町山広美さんが女子力アップにつながる映画を紹介する『and GIRL』の人気連載「町山広美の『女子力アップ映画館』」。今回は、映画『マイ・インターン』の魅力を教えてもらいました。
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andGIRL11月号より
「2分で用件を話して」。そんなことを部下に毎日言う、女社長。自分の忙しさに陶酔してる傲慢でイヤなやつと思われるのが、当たり前。例えば、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたあの鬼編集長も、そうでした。
それがこの作品では、忙しさを乗りきらなくちゃという必死さから言ってるように聞こえるのは、アン・ハサウェイだから。うるうるとした垂れ目にだまされるからかしら。アメリカではその優等生ぶりが「わざとらしい」と意地悪なジョークのネタにされたりもするけれど、役にハマれば、やっぱり強い。
『プラダを着た悪魔』で編集長にさんざん絞られるアシスタント役だったアンがこの映画で演じるジュールズは、急成長中のファッション通販サイトを運営する会社のCEO。社会福祉の一環として高齢者をインターン採用することになり、その1人が彼女の個人アシスタントに配属される。40歳も年上、70歳のおじいさん。使いづらいし、どうせ使えないでしょと思ったところが、次第に大事な存在に……というお話です。そのおじいさん、ベンを演じるのはロバート・デ・ニーロ。でも元ギャングではなく、生真面目なサラリーマン。引退してのんびり暮らすつもりだったのに、妻を亡くし、1人旅も次第に虚しくなってしまった。
もう一度働きたいと願ったのは、生活のためではなく、誰かに必要とされることの喜びを知っているから。一方のジュールズは、毎日いっぱいいっぱい。自宅で立ち上げた通販サイトが大成功して、20代で多くの従業員を率いる会社のトップに。急激に責任が大きくなっていく毎日で、「2分で用件を話して」と言ってしまうのも、業務の隅々まで自分の目を届かせようとしてるから。
そう、彼女は、まかせられない女。仕事がデキる女にはよくいます。全部自分が目を通そうとするもんだから、周囲に余計な緊張や仕事を増やして、効率が悪くなっているのに、失敗するまでそれに気づけない。この映画、そんな「仕事がデキる女あるある」がまず面白い。母親と仲がよくない。専業主婦のママ友との関係が常に緊張。夫を「理解ある男性」という理想的なイメージに勝手にはめこんで現実を見てない。
脚本・監督のナンシー・マイヤーズは、コメディーを得意とするベテラン。自身もデキる女なだけに、さすがにわかってらっしゃる。ジュールズには、いかにも優しげな夫と愛らしい娘がいます。夫は、彼女の成功がより大きなものになるように、仕事をやめて、専業主夫になってくれた。なんて恵まれた生活!でも、その裏側では……。
夫婦の危機。次々と勃発する難題にテンパる彼女に、ベンが手を差し出します。とても的確な救いの手。でもそれを最初、「気がまわり過ぎてキモい」と警戒してしまうのも、デキる女あるある。
※『andGIRL』2015年11月号

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