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業界実話怪談。背筋も凍る、本当にあった怖〜い話【恐怖のエレベーター編】のメイン画像

霊感のない僕が、あることをきっかけに見えるように・・・

プロのカメラマンを目指してスタジオに就職したのが27歳の頃。3ヶ月間はアシスタントの研修期間で、撮影が終わってから後片付けをするのが僕の仕事だった。

その日もスタッフルームで同期のY沢と待機していて、先輩に呼び出されたのは深夜3時。スタジオはスタッフルームから大通りを挟んで対面にある。車通りは少なくなり、近隣の店もほとんど閉まっている。歩道沿いにポツポツと立ち並ぶ外灯だけが、霧に包まれてぼんやりと光っていた。

その薄暗い夜道でY沢と話をしながら信号待ちをしていると、僕の左側に立っているY沢ごしに、自転車に乗った女性が遠くに見えた。こんな時間に物騒だな。そう思いつつ、彼女はどんどん近づいてくる。どんどん近づいて、僕はなんだか異様な影を感じた。見てはいけないものを、見てしまったんだ。女の肩にのっている、赤ん坊の顔・・・。

初めて幽霊を見た・・・

一瞬ゾワッと悪寒のようなものが体中を巡り、僕は初めて、幽霊を見たのだと思った。冷たい汗がにじむ。必死に、Y沢の目だけを見るようにして会話を進めた。そして僕らの横をスッと自転車が通り過ぎたのを肌で確認して、とっさに振り返った。やっぱり・・・。

彼女の背中には赤ん坊なんていない。「今、あの人の肩に赤ちゃんがいたんだけど・・・」Y沢にそう伝えても、「何言ってんの?こんな夜中にいるわけないじゃん」ときっぱり否定されてしまった。間もなく信号が青に変わり、僕はなんだかすっきりしないままスタジオに向かった。

今の出来事はいったん忘れて仕事に専念しよう

「まぁ疲れてるんだよ。とりあえず、メイクルームから先に片付けようぜ」Y沢の軽い口調に促され、僕らは2階にあるメイクルームに向かった。撮影が終わったばかりで電気はつけっぱなし。物が散らかった雑多な部屋でさっそく仕事にとりかかろうとすると、パッと照明が消えて室内が真っ暗になった。

「ブレーカーが落ちたのか?」とY沢が言う。この部屋だけ?そんなこと、あるはずがない。でもこんなに暗くては仕事もできないので、確かめに階段を降りようとした。その時・・・パチ。僕らの背後で電気がついた・・・。

それ以来、幽霊を見るのは日常茶飯事に

その日を境に、僕は普段から見えるようになった。路駐している車の後部座席から幽霊が覗いていたり、横断歩道の向かい側でおじいちゃんが手招きしていたり。「おいおい、赤信号だろ・・・」と思いながら、ふと目をそらすと消えている。こういった類の存在は日常にありふれていて、気持ち悪かったけど、まぁ危害が加わるわけでもないので普通に過ごしていた。

なぜかエレベーターのドアが必ず開いている

もう一つ、生活の中で大きく変わったことがある。事務所は5階にあるんだけど、帰り際にエレベーターホールへ出ると、まるで僕を待っていたかのようにいつもドアが開いている。他のスタッフもその光景をよく見かけているから、もう誰も不思議に思わなくなっていた。

その日は珍しくドアが閉まっていて・・・

その日は、事務所を出てもエレベーターのドアは閉まっていた。僕はスタッフと一緒にいて、「開いてないなんて珍しいな」なんて談笑しながら下りボタンを押した。階数の表示が1階から順に点滅していく。そして5階に到着し、ドアが開いた。平然と乗り込んで行き先階のボタンを押そうとしたその時だ。僕は自分の目を疑った。

え・・・嘘だろ・・・

1階から8階まですべてのボタンがついている。5階だけが、消えた状態。そんなことありえない・・・。だって、上ってきたエレベーターで下の階のボタンがついているはずがないんだから。僕の人差し指が、すでに押されているボタンの前で小刻みに震えている。この不気味な空間に2人とも無言になり、さすがに怖くなってエレベーターを飛び出した。

エレベーターは使わず階段で降りよう

ドクドクと大きく刻む自分の鼓動を感じながら駆け足で階段を降りる。無事に1階のエントランスに到着して、「お疲れさま」とスタッフに声をかけた。すると・・・僕の目の前で、エレベーターのドアが、開いていた・・・。
取材・文/飯田有希菜

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