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【芳麗・女と文化の話】山田ルイ53世が語る〝なりたい〟より〝なれた自分〟で生きる方法 のメイン画像

今月のゲスト:山田ルイ53世さん

ワイングラス片手に世に華麗に登場する前も、そのインパクトのある芸で世間を賑わして以降、一発屋芸人と呼ばれるようになってからも。髭男爵・山田ルイ53世さんの人生には波乱万丈と悲喜こもごもがあった。今、男爵の語りや文章が多くの人を振るわせるのはその生きざまが言葉に現れているからこそ。山田さんの何度でも「ルネッサーンス!(復活)」な人生は、このサバイバルな時代を生きつなぐ希望をくれる。

人間は悪気なくナチュラルに 一発屋を舐めてくるものです

芳麗 各所で高い評価を得た『一発屋芸人列伝』や新作『一発屋芸人の不本意な日常』も、男爵の文章は哀愁とユーモアの味わいが深くて。一発屋芸人という特殊な経験の話なのにいろんな人が自分の人生に重ねてしまうんじゃないかなと思います。

山田 〝一発屋芸人〟という肩書きを一般の人の中に放り込んだとき、絶妙な触媒になるのかもしれません。人間を観察する観測地点として、一発屋という立場はなかなか面白い。

芳麗 と言いますと?

山田 まず、我々の立場にいると、人間ってナチュラルに他者を舐めてくることがよくわかります(笑)。その人が悪いわけじゃない。僕だって、別な場所では同じことをしているかも。人間ってそういう部分を持っているんだなと。特に一発屋みたいに、圧倒的に負けた(と思われている)人間を、悪気なく下に見る。そういう人が少なからずいるのが世間だと僕は身をもって知っています。そのおかげで、独自な視点を得ることができてラッキーだったなと(笑)。ずっと勝っていると見えないこともありますからね。

芳麗 男爵の文章を読みながら世間の常識や既存の価値観への疑問を改めて感じました。たとえば、一流会社に勤めたり、裕福な人と結婚すれば、幸せになれるとは限らないとか。一発屋芸人がかっこ悪いとか負けているとは一概に言えないのも同じ。幸と不幸、成功と失敗はもちろん、面白い・つまらないなども、そんなに簡単に類型化できない。

山田 お笑いに関して最近考えていたのは、昨年末のM-1のこと。世間的には初めて注目を浴びたミルクボーイさんやぺこぱさんはなぜウケたのかを分析した記事をネットでたくさん目にしたんですけど。ぺこぱさんに関しては、どの記事もオチは「ぺこぱは人に寄り添う優しい芸だから、今の時代に合っている」と。でも、僕はそんな薄っぺらい理由でたどり着く芸じゃないと思いました。

芳麗 時代は関係ないと?

山田 はい。『一発屋芸人列伝』を書いたときにも思ったことですが、芸っていうのは、その人の人生の中で必然性をもって辿り着く部分がある。いろんな場所で負けて諦めて、それでも絞り出して、流れ着いたら「この芸」だった、やらざるを得なかった、というところがある。

芳麗 髭男爵のブレイクネタ、「乾杯漫才」も、そうであると書いていらっしゃいましたよね。

山田 みんなたいてい最初は正統派漫才で勝負しようとするんです。でも、なかなかウケない、うまく行かない。たとえウケても、ほとんどが売れない。それでもときには苦し紛れにでも策を練り続けて、自分たちの芸にたどり着く。ぺこぱの「ノリつっこまない」芸は「あれも駄目、これも駄目」と否定され続け、挫折した人間にしか〝手を出せない〟類のもの。もちろん、才能やセンスがあってのことですし、僕の想像に過ぎませんが。

芳麗 その人となりや人生が芸に出ているということですか?

山田 出ざるを得ないってことでしょうね。少なくとも時代のおかげとかではないかなと。

Check!人生、負けのデータを蓄積すると未来の精度が上がっていく

芳麗 男爵の考察が味わい深いのは、人生で数多の挑戦と失敗を繰り返してきたからなんだろうなと感じました。中学時代から6年間の引きこもり、大学中退から芸人の道へ。そして、一発屋として大ブレイクするなど波乱万丈で・・・。

山田 別に挑戦はしてないですが、負けを繰り返してるのは間違いない(笑)。だからね、年下世代によく言うのが、テンポよく負けていくことは大事じゃないかと。負けのデータを蓄積することは、自分の未来の精度を上げる部分もあるので。

芳麗 未来の精度を上げる?

山田 ええ。『フリースタイルダンジョン』ってご覧になってます?ラップバトルの番組なんですけど。その番組にICE BAHNのFORKっていうMCの方が出ていて。あるとき、若手ラッパーとの対戦で、「背伸びするのは良いけど身の丈は超えるな。背伸びはまだ地に足がついてっからな」みたいなことを仰ってて。要約すると、「身の丈に合った言葉を発しろ」と。すごく共感出来ますね。つまり、経験していないことを語っても説得力も面白みもないと。

芳麗 核心ですね。著書にも書いてありましたけど、「SNSで他人にばかり厳しい人」は、自分自身は経験を避けているから、生々しい失敗や負けがないのかもしれないですよね。

山田 別に挑戦なんて華々しいことはしなくても良いけど、人生、負けてみるってのもおつなものです。

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